小説を書いている時、私はいつでも過去の時間にたたずんでいる。昔の体験を思い出すという意味ではなく、自分がかつて存在したはずなのに今やその痕跡などはほとんど消えかけた、遠い時間のどこかに、物語の森は必ず茂っているのである。