もしも菌類が存在しなければ、落ち葉はもとより、風に倒れた木が累なりあって、どうしようもなくなるだろう。しかしながら、木の倒れるのを待っていては処理が間に合わない。そこで、まだ生きているあいだから、死体処理は開始され、生物は病み始める。腐った木や湿った土とは書いたが、それ自体が、キノコたちの存在様式であって、死とは生の一部分でもあるのだ。 だから生とは死を組み込んで成立している。菌と植物、あるいは菌と動物の共生というより、それは生と死の共生でもある。人は死を異界に閉じこめようとする。土の中の異界は閉ざされている。それでもその異界からの贈り物としてのキノコたちの姿を通じて、生と死の交錯を考えることができる。

mushrooms and cross