きのこを好きになっていちばんうれしかったのは幼い頃大好きだった童話の中にひっそりとキノコがいてくれたことでした。キノコは言葉にこそしませんが、きのこはそのきのこが大きくなって再び童話を手にするであろうことを知っていてくれたような気がしたのでした。
*ふしぎの国のアリス 講談社より
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ふしぎの国のアリス
このアリスの本小さい時からあった本でずっと物置に置きっぱなしになっていたので黴臭いです。でもこの菌臭がこれまたいいのです。あぁ自分は菌類なんだなと感じる瞬間です。
カビや茸の匂いーこれからまとめて菌臭と言おうーは、家への馴染みを作る大きな要素だけでなく、一般にかなりの鎮静効果を持つのではないか。すべてのカビ、茸の匂いではないが、奥床しいと感じる家や森には気持ちを落ち着ける菌臭がそこはかとなく漂っているのではないか。それが精神に鎮静的にはたらくとすればなぜだろう。
菌臭は、死ー分解の匂いである。それが、一種独特の気持ちを落ち着かせる、ひんやりとした、なつかしい、少し胸のひろがるような感情を換気するのは、われわれの心の隅に、死と分解というものをやさしく受け入れる準備のようなものがあるからのように思う。自分の帰ってゆくかそかな世界を予感させる匂いである。
『キノコの不思議』の中井久夫さんの文章です。
ふしぎの国のアリス
ふしぎの国のアリスの中でもこの福音館から出版されているアリスが好きです、最近なんだかアタマがカチカチであれしなきゃ、これしなきゃが高まってきたらそのきのこはこの本を手に取るように心がけています。ジョン・テニエルの挿絵がこれまた素晴らしいんですよね。特に芋虫の忠告が。
女王のクローケー・グラウンドのきんちゃく
アリスがまずはじめにむつかしいと思ったのは、何よりも槌がわりのフラミンゴのからだあつかいかたでした。フラミンゴのからだをたくしあげて、うまく小わきにかかえこみ、足をぶらさげるようにするまでは成功したのですが、首をくるっと曲げて、まことにこまったような表情でアリスの顔を見あげるので、思わずふきださずにはいられないのでした。そして、顔をさげても、もう一度打とうとすると、こんどはハリネズミのほうが、まるめたからだをのばして、はいだそうとしている最中なので、すっかりいらいらしてしまいます。おまけに、アリスがハリネズミをころがそうとする方向には、かならずうねかみぞがあるようにできていて、じゃまになるのでした。