先日の「キノコ狩ルチャー」で飯沢耕太郎さんは、ご自身がキノコに夢中になる様子を「病気」という言葉を用いて表現されていました。キノコの病いについて、僭越ながらそのきのこが説明させていただきます。

キノコの病い4段階

  1. 第1段階 潜伏期
  2. 第2段階 発病
  3. 第3段階 進行期
  4. 第4段階 末期

第1段階とは、なんとなくキノコグッズを手にしていたり、お鍋に入っているしめじやえのきを裏返して見てみたりと、まだ本人は「キノコが好き」ということには気づきません。病気で例えるなら潜伏期間といった具合です。初感染から発病までの期間は人によって様々ですが、人によっては数ヶ月で発症する人もいれば、十数年間も発症しない人もいます。この期間のあなたに自覚できる症状はありませんが、体の中では胞子が増殖し続けています。

第2段階とは、口に出して「キノコが好き」「キノコが美しい」といえるまでになり、自覚症状の出たあなた、そう、あなたのことです。おめでとうございます。立派なキノコ病です。この時期の特徴的な症状として、携帯電話にキノコ・ストラップをつける、車のルームミラーのところにキノコグッズをぶらさげるといったキノコグッズ症状があげられます。また一部の患者には「多幸感」といった精神症状が報告されています。「幸せ」という言葉の定義を根本からくつがえす圧倒的な幸福感を感じることができます。あなたの体の中で静かに増殖を続けていた胞子がキノコの花を咲かせ始めます。ちなみに、この病い、治療法は発見されていません。発症すると死んでも治りません。

第3段階とは、頭いえ体中が胞子でいっぱいになり、ふりはらおうとするかのようにとんでもないキノコパワーでもって加速し始める進行期です。この第3段階までくると、初対面の人のキノコ病親和性の有無を瞬時に判断できるようになる、キノコに言及されている小説をタイトルだけから発見することができる、など「キノコ勘」と呼ばれる特殊能力に目覚める患者が現れ始めます。そして、キノコに関するブログを始める、イベントを企画する、企画書を出版社に持ち込む、など、周囲への感染力が著しく増大します(病気の本人は「伝道」や「布教」という言葉を使いますが)。

そして第4段階、末期です。自分の職業が何なのかわからくなり、話題のほとんどがキノコになります。また、あらゆる物事をキノコにたとえて説明する、ありとあらゆる価値をキノコ性の有無で判断する、など思考が完全にキノコに支配されます。この段階までくると、通学中の小学生に石を投げつけられたり、親戚の法事に呼ばれなかったり、なぜか社会からの風当たりが強くなってきます。患者本人はそんなことおかまいなしで、キノコに選ばれし者として迫害を受ける宿命に喜びすら感じながら、キノコの森の奥深くへと歩を進めます。

そのきのこの予後に乞御期待!