ひとよ茸ランプ

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キノコをモチーフにした芸術作品といえば、エミール・ガレのひとよ茸ランプを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。また、ガレといえばキノコの人、という印象を持つ方も多いと思います。キノコといえばガレ、ガレといえばキノコです。そのきのこが避けては通ることのできないトピックの一つです。

さて、ガラス工芸に革命を起こしたエミール・ガレ(Émile Gallé, 1846-1904)はアールヌーボーを代表する有名な作家です。そんな彼の工場の裏扉には「われわれの根源は森の奥にあり」と記されていたといいます。森の奥の土の中に生きるキノコをモチーフにした彼の晩年期の作品、ひとよ茸シリーズこそ彼の工芸家としての人生の集大成であったといえるのではないでしょうか。

ひとよたけさん(なんというハンドルネーム!)のブログの記事によると、

ガレはこのひとよ茸ランプを合計6個作ったそうなのですが、そのうち3個はすでに壊れてしまっていて、現存するのは世界に3つだけ。ガレがひとよ茸ランプを作ったのは亡くなる2年前。そのとき彼は白血病を病んでいて、自分の余命がそれほど長くはないと感じていたようです。そんなとき、彼が作品のモチーフとして選んだのが、ひとよたけでした。新しく生まれ、その日のうちにぐんぐん成長したかと思うと、次の朝には溶けて無くなってしまうひとよたけ。しかし、その溶けたキノコの横にはまた別の新しいいのちが生まれている。ガレはそんなふうに消滅と再生をくりかえすひとよたけの姿を見て、そこに生命のはかなさと力強さを感じたといいます。ひとよ茸ランプは、ひとよたけの成長を3段階に分けて表現しています。生まれたばかりの姿、成長過程の姿、そして傘が開ききり、溶けかかっている姿です。

なんですって。ひとよたけさんが学芸員さんの話を何度も聞いて耳で覚えてしまったというエピソードも素敵ですね。

そして、写真はその3つの現存するランプです。上から順に、諏訪の北澤美術館、東京のサントリー美術館、ガレの故郷であるフランスのナンシーにあるナンシー派美術館(Musée de l’Ecole de Nancy)に所蔵されているランプです。それぞれ柄の曲がり方や傘の開き具合は微妙に異なりますが、3つとも3段階の成長過程が表現されていますね。

北澤美術館の学芸課長である鈴木潔氏が著された「光の魔術師—エミール・ガレ」という本もあります。とりあえずショッピングカートにいれておきましょうね。
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Emalia Olkusz

きゃ~かわいい!
ベニテングタケにインスパイアされたと考えざるを得ない大胆なドット柄のお鍋です。これは、1907年創業のポーランドのEmalia Olkusz社製の琺瑯のお鍋です。ほかにもミルクパンやコーヒーポット、バケツなんかもありますよ。買いたい人は各自ググってください

マタンゴ

このサイトをご覧の皆様の中に、「最も好きな映画は何か?」と問われて「マタンゴ」以外の映画の名前をあげる人がはたしてどれほどいるのでしょうか。…きっとたくさんいますよね。っていうか、「マタンゴが一番すき」なんて人そうはいませんよね。

念のため、この映画をご存じないインチキきのこフリークの皆様のために簡単に説明しておくと、「マタンゴ」は1963年公開の東宝制作のホラー映画です。原作は、1907年に出版されたウィリアム・ホープ・ホジスンの「The Voice in the Night(全文が公開されています)」です。映画のあらすじは、

豪華ヨット「あほうどり号」で海に繰り出した7人の若い男女が遭難し、無人島に漂着した。そこはカビと不気味なキノコに覆われた孤島で、キノコ以外に食料はまったくなかった。やがて彼らは食料と女性を奪いあい、対立しあう。そんな飢餓と不和の極限状態の中、不気味な怪物が出没しはじめる。マタンゴ – Wikipedia

てな感じです。DVDも売られていますがthe Internet Archiveでも公開されてました。

90分近くあります。今晩の過ごし方が決まってしまいましたね。うふふ。

キノコの不思議―「大地の贈り物」を100%楽しむ法

キノコの不思議―「大地の贈り物」を100%楽しむ法

森毅(編)の『キノコの不思議―「大地の贈り物」を100%楽しむ法』のご紹介です。

まずは、目次を見てみましょう。

  • プロローグ―なぜか、キノコの時代なのだ 森毅

1 おそろしいやつ―冥界蘇生

  • 茸たちの反乱 作家・中井英夫
  • この奇なきのこ 作家・都築道夫
  • きのこの匂いについて 神戸大学教授・中井久夫
  • 腐蝕と生の夢 作家・斎藤栄
  • 森の不純物 作家・橋本治
  • 小人の家 漫画家・水木しげる
  • キノコとは何ぞや 元滋賀大学教授・本郷次雄
  • 森の死神たち=毒キノコ 滋賀大学助教授・横山和正

2 美しいやつ―天界浮遊

  • へんなきのこ イラストレーター・南伸坊
  • なき茸 画家・安野光雅
  • キノコ ウォッチング タッチング 俳優・滝田栄
  • 茸とクソの戦争 評論家・種村季弘
  • キノコはUFOなのだ 漫画家・赤塚不二夫
  • まともでないキノコ 和光大学教授・岸田秀
  • 死体を探知するキノコ 京都大学教授・相良直彦
  • アリの目で眺める世界 写真家・伊沢正名

3 はて、面妖なやつ―異界輪廻

  • ふたつのきのこ 中央大学教授・中沢新一
  • きのこと帽子 アート・ディレクター・浅葉克己
  • キノコと赤ん坊 千葉大学教授・大室幹雄
  • ねんきん生活 お茶の水女子大学学長・太田次郎
  • きのこを食うきのこ 国立科学博物館主任研究官・萩原博光
  • 人の心に潜む冬虫夏草 漫画家・白戸三平
  • 異世界の構造物=冬虫夏草 国立科学博物館館友・清水大典

4 おいしいやつ―色界逍遥

  • 誰がキノコを食べるのか 評論家・養老孟司
  • 「キノコは嫌いよ」 「ペンションきのこ」オーナー・小宮山勝司
  • 仙人が食ったキノコ 千葉大学教授・山崎幹夫
  • キノコ名人の死 作家・小島信夫
  • 絶品!キノコ料理 キノコ料理研究家・内田正宏
  • シロアリのキノコ栽培 京都大学教授・安部琢哉
  • 妖蕈譚 漫画家・手塚治虫
  • エピローグ―どうしてこの本が生えたか 森毅

いかにも面白そうじゃないですか?面白いんです。
いろんな分野の著名人によるキノコに関するエッセイと対談を収めた本です。
なぜ、キノコがこんなにも人を惹きつけるのか、この本を読むといろいろ納得できます。

1エントリーだけでは紹介し切れそうにないので、少しずつ紹介させていただきます。

光るキノコ

光ってます!

green light after rain

發光小菇傘下菌摺--20060820-賴鵬智攝

上が孟璟花さん、下がpcbirdtwさんの写真です。両方とも台湾の写真です(たぶん)。

なんと世界には約50種類の光るキノコがあって、幸運にも7種類を日本で見ることができるんです。神戸や和歌山、三重、大分でも見つかっているそうですが、光るキノコといえばやはり八丈島でしょう。

特定非営利活動法人八丈島観光レクリエーション研究会のウェブサイトによると、

八丈島には7種類の「光るきのこ」があります。私たちの「光るきのこ観察の森」は1200坪の規模を誇り、シーズン中は2種類から4種類が確実に観察できます。観察できる時期は、4月中旬から11月上旬です。おすすめは、5月下旬の梅雨入りから9月上旬までが特にすばらしいです。八丈島にお越しの際は是非お立ち寄りください。無料送迎バスを運行しております。6~8月は毎日運行!みなさんのモラルに任せて完全オープンですので八丈の夜を満喫してください。

だそうです。「モラルに任せて」の部分が素敵です。これからがちょうどシーズンですよ。いますぐ準備をはじめて行くしかありませんね、八丈島。東京から飛行機で45分、島内の移動にレンタカーを使われる場合は、フリーダムレンタカーがお勧めです(名前的に)。


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場所はこのあたりです。それでは現地集合で!

きのこ会議

青空文庫で見つけました。「夢Q」こと夢野久作のきのこ会議です。

きのこ会議 夢野久作

初茸、松茸、椎茸、木くらげ、白茸、鴈(がん)茸、ぬめり茸、霜降り茸、獅子茸、鼠茸、皮剥ぎ茸、米松露、麦松露なぞいうきのこ連中がある夜集まって、談話会を始めました。一番初めに、初茸が立ち上って挨拶をしました。
「皆さん。この頃はだんだん寒くなりましたので、そろそろ私共は土の中へ引き込まねばならぬようになりました。今夜はお別れの宴会ですから、皆さんは何でも思う存分に演説をして下さい。私が書いて新聞に出しますから」
皆がパチパチと手をたたくと、お次に椎茸が立ち上りました。
「皆さん、私は椎茸というものです。この頃人間は私を大変に重宝がって、わざわざ木を腐らして私共の畑を作ってくれますから、私共はだんだん大きな立派な子孫が殖えて行くばかりです。今にどんな茸でも人間が畠を作ってくれるようになって貰いたいと思います」
皆は大賛成で手をたたきました。その次に松茸がエヘンと咳払いをして演説をしました。
「皆さん、私共のつとめは、第一に傘をひろげて種子(たね)を撒き散らして子孫を殖やすこと、その次は人間に食べられることですが、人間は何故だか私共がまだ傘を開かないうちを喜んで持って行ってしまいます。そのくせ椎茸さんのような畠も作ってくれません。こんな風だと今に私共は種子を撒く事が出来ず、子孫を根絶やしにされねばなりません。人間は何故この理屈がわからないかと思うと、残念でたまりません」
と涙を流して申しますと、皆も口々に、
「そうだ、そうだ」
と同情をしました。
するとこの時皆のうしろからケラケラと笑うものがあります。見るとそれは蠅取り茸、紅茸、草鞋茸、馬糞茸、狐の火ともし、狐の茶袋なぞいう毒茸の連中でした。
その大勢の毒茸の中でも一番大きい蠅取り茸は大勢の真中に立ち上って、
「お前達は皆馬鹿だ。世の中の役に立つからそんなに取られてしまうのだ。役にさえ立たなければいじめられはしないのだ。自分の仲間だけ繁昌すればそれでいいではないか。俺達を見ろ。役に立つ処でなく世間の毒になるのだ。蠅でも何でも片っぱしから殺してしまう。えらい茸は人間さえも毎年毎年殺している位だ。だからすこしも世の中の御厄介にならずに、繁昌して行くのだ。お前達も早く人間の毒になるように勉強しろ」
と大声でわめき立てました。
これを聞いた他の連中は皆理屈に負けて「成る程、毒にさえなればこわい事はない」と思う者さえありました。
そのうちに夜があけて茸狩りの人が来たようですから、皆は本当に毒茸のいう通り毒があるがよいか、ないがよいか、試験してみる事にしてわかれました。
茸狩りに来たのは、どこかのお父さんとお母さんと姉さんと坊ちゃんでしたが、ここへ来ると皆大喜びで、
「もはやこんなに茸はあるまいと思っていたが、いろいろの茸がずいぶん沢山ある」
「あれ、お前のようにむやみに取っては駄目よ。こわさないように大切に取らなくては」
「小さな茸は残してお置きよ。かわいそうだから」
「ヤアあすこにも。ホラここにも」
と大変な騒ぎです。
そのうちにお父さんは気が付いて、
「オイオイみんな気を付けろ。ここに毒茸が固まって生えているぞ。よくおぼえておけ。こんなのはみんな毒茸だ。取って食べたら死んでしまうぞ」
とおっしゃいました。茸共は、成る程毒茸はえらいものだと思いました。毒茸も「それ見ろ」と威張っておりました。
処が、あらかた茸を取ってしまってお父さんが、
「さあ行こう」
と言われますと、姉さんと坊ちゃんが立ち止まって、
「まあ、毒茸はみんな憎らしい恰好をしている事ねえ」
「ウン、僕が征伐してやろう」
といううちに、片っ端から毒茸共は大きいのも小さいのも根本まで木っ葉微塵に踏み潰されてしまいました。

底本:「夢野久作全集7」三一書房
1970(昭和45)年1月31日第1版第1刷発行
1992(平成4)年2月29日第1版第12刷発行
初出:「九州日報」
1922(大正11)年12月4日
入力:川山隆
校正:土屋隆

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キノコたちの顔が思い浮かんでにんまりしてしまいます。

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