ヒトヨタケ

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「菌も同然に、根づいた場所で大きくなって、生きて働いた跡も残さず、そのまま腐って無くなるようでは、なんの人間に生まれた詮がありましょうか?」

おどる妖精

ぼくは聞いた、まだ朝のこぬ丘で、
ヒバリも目ざめないころ、
あさあけの火が
野ばらの萼にむすんだ夜つゆを まだ照らさないころー
妖精の輪から聞こえる妖精の歌を。
かろやかにおどりまわりながら、
ふるえるつばさを照らす月そっくりに、
やさしく歌をうたうのを。
星あかりは、歌にあわせるように
こだまにあわせるように、またたいて、
また星たちは、きららのひとみを、ふるえる光でおめかしして。
でも、元気あふれる火星は
いくさの朱に染まり
血いろの光を大地に雨とふらせた。
火星はひとり、西空のはるか下、
そしてぼくは、さんざしの茂みのかげで、
亜麻いろの髪をした妖精たちのうえに
朝の火がふりそそぐのをみつめた。
その歌ごえが調子をはずして、こごえになり、
とうとう 霧みたいに色あせてしまうまで。
そうして、大きな、ひろい日の光は
あれ野をどこまでもひろがって、
はるか遠いアードンの銅製の風見どりを
黄金の炎に浮かびあがらせ
アロアの塔や森を
月夜の夢から ぼんやりめざめさせた。